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コラム

逆引きマーケ

逆引きマーケ Vol.1 :
「それって何が良いの?」が置き去りにされる時代

世の中には、企業側は「価値を伝えているつもり」なのに、消費者側は「で、何がいいの?」で止まっている表現が多い。

例えば── 「〇〇レザー使用」「遺伝子組み換えではありません」「オーガニック」「ノンシリコン」「サステナブル」 …など、世の中には“知っている前提”で作られた言葉が溢れている。

業界側では“価値ワード”として成立しているが、一般生活者の多くは、 「それって結局、何が嬉しいの?」を理解していない。
「価値」ではなく「翻訳」が大事。
例えば「〇〇レザー使用」。
革好きには価値が伝わる。
しかし普通の人は、何が他と違うのか、なぜ高いのか、耐久性?手触り?経年変化?ブランド? が分からない。
つまり、「素材名」は説明しているが、「生活価値」は説明していない。
本来必要なのは、例えば「長年使うほど艶が増し、傷すら味になる革です」 という“生活翻訳”だ。

消費者は素材を買っているのではない。
未来の体験を買っている。

「遺伝子組み換えではありません」の違和感 これはさらに象徴的だ。
多くの人は実際、遺伝子組み換えが何か知らないし、どんな議論があるのか知らない。
なぜ“していない”が安心なのか説明できない状態である。

つまり、「不安ワードだけが流通し、理解が流通していない」 のである。
これは現代マーケティングの特徴でもある。
場合によっては、不安商法になると言っては大げさだろうか。

現代は「意味の共有」を飛ばしやすい。
昔は対面販売だった。
店員が、なぜ良いのか、どう違うのか、誰向けなのかを補足できた。
しかしEC・SNS時代では、単語だけが独り歩きする。
結果、「知っている人だけが理解できる市場」が増えていく。
これはマーケティングというより、半分「業界内の符丁」である。

普通のマーケティングは、「価値 → 言葉」で考える。
しかし逆引きのマーケティングは逆だ。
「消費者の【?】から逆算する」のである。

つまり、「それって何?」「何が嬉しいの?」「自分に関係あるの?」「結局どう変わるの?」から設計する。
これは、“知識を前提にしないマーケティング”とも言える。

本当に強い商品説明は「専門性」を減らしている。
Appleは、CPU名、メモリ規格、転送速度などを主役にしない。
代わりに、「映画編集がサクサク」「バッテリーが一日持つ」という生活翻訳をする。
つまり、スペックではなく、「体験」に変換している。

これからの時代に必要なのは、「知ってる前提」を疑う力。
業界に長くいるほど、人は“常識の錯覚”を持つ。
しかし消費者は、その業界の住人ではない。

マーケティングとは、難しい言葉を並べることではない。
相手の頭の中にある「つまり、どういうこと?」を先回りして、翻訳して届ける技術なのだと思う。

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