コラム
逆引きマーケ Vol.2 :
人手不足時代、“売る”より先に「働きたくなる店」をつくれるか

最近、スーパーへ行くたびに感じることがあります。
私の場合は、地域の小さなスーパーが多いです。
その時に良く感じるのですが、レジのスピード、接客、品出しの精度…
その“差”が、以前(昔)より大きくなっていると感じます。
もちろん、大手チェーンでも優秀な人材はいます。
しかし、地方スーパーや中小規模の店舗では、人手不足の影響をより顕著に感じます。
特にレジは分かりやすい。
経験豊富な人は、バーコードを通すリズム、袋詰めへの配慮、会話の温度感まで美しい。
一方で、慣れていない人は、どうしても動きが止まり、行列が生まれ、顧客のストレスになります。
だが、これは「本人の能力」の問題なのでしょうか。
おそらく違うと思うのです。
本質は、“育てる余裕”がなくなっていることなのではないかと。
「コスト至上主義の限界」
小売業は長らく、効率化との戦いでした。
人件費を削る。
教育時間を削る。
マニュアル化する。
セルフレジを導入する。
もちろん、それ自体は当たり前のことですね。
しかし、少子高齢化による慢性的な人手不足の時代に入り、「人を使い捨てる設計」は限界に来ているのではないでしょうか。
これから必要なのは、“いかに安く回すか”ではなく、「いかに人が育ち、辞めず、誇りを持てるか」という発想かと。
つまり、マーケティングの対象が「顧客だけ」ではなく、“従業員”にも向く時代になっていることを感じます。
「逆引きマーケ」という発想でとらえると、「どうすれば売れるか」から考えるのではなく、「どうすれば働きたくなるか」「どうすれば誇りを持てるか」から逆算して、結果として顧客満足を高める。
そんな“逆引き”の発想が重要になるのではないでしょうか。
例えば、こんな取り組みを考えてみました。
「レジ早打ち大会を、地域イベントにする」
単なる社内研修ではなく、
「レジ早打ち選手権」
「神袋詰めコンテスト」
「棚卸し日本一決定戦」
のような、“競技化”をしたら楽しいですね。
しかも、賞金付きで!
地域のお祭りレベルで!
一見すると遊びに見えますが、しかし実際は、
技術向上
モチベーション向上
従業員ロイヤルティ向上
SNS拡散
採用ブランディング
を同時に実現できる可能性があります。
特に若い世代は、「意味のない努力」には反応しないが、“ゲーム性”や“称賛”には強く反応します。
「うちのスーパー、レジ大会あるんだよ」そんな会話が自然に生まれるだけで、企業文化は変わるかもしれません。
「“教育”をコストではなく、コンテンツにする」
今、多くの企業は教育を「必要経費」と考えています。
しかし本来、教育とは最強のブランディングだと思うのです。
たとえば、
接客No.1スタッフを動画配信する
品出し職人をスター化する
ベテランのレジ技術をSNS化する
など、“人”をコンテンツに変える発想があってもいいですよね。
これは単なる採用広報ではありません。
「この店、なんか人が楽しそう」
という空気感そのものが、店の価値になります。
AI時代だからこそ、(AIのおかげで)“人間力”が差別化になると思うのです。
セルフレジもAIも進化すしていきます。
だが最後に残る競争力は、おそらく“人間味”だと思うのです。
気が利く
会話が温かい
動きが美しい
常連を覚えている
こうした価値は、マニュアルでは作れません。
だからこそ企業は、
「人を削る努力」ではなく
「人が輝く仕組み」
へ投資しなければならないと思うのです。
それは、勇気とか、哲学とか、強さとか….、「人間的」な取り組みです。
遠回りに見えて、実は最も強いマーケティングになります。
これからの時代、選ばれるのは「店」ではなく「文化」です。
商品価格だけでは差別化できない時代です。
ネットで何でも買える時代です。
そんな中で、ますますリアル店舗に必要なのは、「この店で働く人、なんかいいよね」という空気です。
顧客は、その空気を敏感に感じ取っています。
人手不足時代とは、単に“人が足りない”時代ではなく、「人を大切にする企業だけが生き残る時代」なのかもしれません。
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