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コラム

逆引きマーケ

逆引きマーケ ちょっと寄り道 
ひとりごと「原点に戻ると、商売の本質が見えてくる」

私はずっと、小さなカフェをやりたいと思っている。
それは目標というよりも、長い間もっている漠然とした「夢」。
あるいは、人生のどこかに存在する「もうひとつの世界」のようなものだ。

たぶん、その原点は私の社会人としての出発点でもある「珈琲道場侍」でのアルバイト経験にある。

先日、久しぶりに近藤マスターと打ち合わせをした。
侍は創業から47年。マスターは82歳になった。
これまでに3つの大病を経験され、ずっと心配していたのだが、最近はだいぶ元気になられたようで、久しぶりにゆっくり話をすることができた。

珈琲道場侍は、私が18歳の時、人生で初めてアルバイトをした店だ。
大学1年生の夏休み。
JR亀戸駅前に新規開店準備中の店があり、「オープニングスタッフ募集」の貼り紙が出ていた。

店の名前は「珈琲道場侍」。
正直、変な名前だと思った。

面接の日、私は短パンにサンダルという格好で行った。
当然のように叱られた。
それでも採用され、私は開店第1号のスタッフになった。

当時の私は、ギターと作曲とバンド活動に夢中だった。
自分は何でもできると思っていた年頃で、大学よりも音楽のほうが大切だった。
18歳から25歳まで、私は侍で働きながら音楽という夢を追い続けた。

侍の接客は、本当に厳しかった。

「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
声の出し方から、お客様への姿勢まで何度も教えられた。
従業員は、トイレを使うたびに掃除をする。

当時はバブル景気の真っ只中。
店は毎日大繁盛だった。
カウンターの中とホールを行ったり来たりしながら、コーヒーを淹れ、パンを焼き、生ホイップを作り、洗い物をする。
忙しい日は、カウンターの隅にしゃがみ込んでパンをひとかじりするのが昼食だった。

若い頃は気づかなかったが、会社を経営するようになって分かったことがある。
あの頃に教わったことは、すべてに通じていることを。

トイレ掃除も。
接客も。
挨拶も。
声を掛け合うことも。
お客様の顔を覚えることも。

結局、商売の本質は派手なマーケティングや難しい理論ではなく、「目の前の一人のお客様を大切にすること」なのだと思う。

マーケティングというと、どうしても戦略や仕組みの話になりがちだ。
しかし、その土台には必ず人がいる。

今でも侍に行って、水出しアイスコーヒーを飲みながら、まだまだお元気なマスターとお話をするのが楽しい。

私の仕事の原点は、すべてこのお店で学んだのだと思う。
だから私は今でも、小さなカフェをやっている自分を思い描く。
商売とマーケティングの原点が、そこにあるような気がするから。

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