コラム
逆引きマーケ Vol.5 :
大企業は地域なんて見なくてもいいのだろうか

私は商店会の役員として地域コミュニティの情報発信に携わっています。
先日、地域活動の一環で、あるグローバル企業の地域店舗を訪ねました。
地域住民向けのLINEコミュニティで、店舗情報をご紹介できないかという相談でした。
案内状を作り、名刺を持参し、趣旨を説明したのです。
結果として、丁重にお断りされました。
もちろん、その企業を批判したいわけではありません。
全国、あるいは世界規模で事業を展開する企業にとって、一地域のコミュニティとの連携は優先順位の高い施策ではないと分かりますし、その判断も理解できます。
しかし、その帰り道、私はふと思ったのです。
「マーケティングとは、本当に利益だけを考えればいいのだろうか」と。
企業活動は利益を生み出してこそ継続できます。
それは間違いありません。
しかし、企業は同時に地域社会の一員でもあるのです。
店舗が存在する街が元気であれば、そこに暮らす人も元気になります。
そして、その人たちが地域を支え、結果として企業もその恩恵を受けることになります。
近年、CSV(共通価値の創造)という考え方が注目されています。
社会を良くすることと企業の利益を対立させるのではなく、両立させようという考え方です。
地域への協力は慈善活動ではありません。
地域が元気になることで企業も恩恵を受けるはずです。
そんな循環をつくることもマーケティングの役割ではないでしょうか。
また、どれだけグローバル企業であっても、実際に接点を持つのは「その地域の」住民です。
ブランドを体験するのは、テレビCMでも広告でもなく、目の前の店舗であり、そこで働く人たちだと思うのです。
つまり企業と顧客の最前線は、いつだってローカルということになります。 私が運営に関わる地域LINEも単なる情報発信ツールではありません。
そこには地域住民同士のつながりがあり、「この街を良くしたい」という共通の想いもあるはずです。
もし企業がそのコミュニティの一員として参加してくれたなら、それは広告以上の価値を持つのではないでしょうか。
マーケティングというと、市場規模や顧客数やコンバージョン率が出てきます。
しかし、数字の先には必ず「一人の人」がいます。
利益にならないかもしれません。 効率も悪いかもしれません。
それでも、その「一人」と「その地域」に目を向け続けることは、マーケターである前に、人として忘れてはならない視点なのではないでしょうか。
今回の出来事は、そんなことを改めて考えさせてくれました。
マーケティングは市場を見る仕事だと言われます。
しかし本当にそうでしょうか。
市場を構成しているのは、一人ひとりの生活者です。
たった一人の人。
たった一つの地域。
その積み重ねが市場です。
だとすれば、マーケティングの原点とは、市場を見ることではなく、目の前の人を見ることなのかもしれません。
そして、企業と顧客の最前線は、いつだってローカルなのだと思います。
辻 正雄
デジタジオ株式会社(ビジコン運営)代表
株式会社アーティストユニオン代表
経営者に寄り添うマーケター:マサオフィス